電気制御部: 分散制御系および動作モード/パラメータをリアルタイム変更可能なモータドライバ

morphは小型でありながらも、メインCPUモジュール、サブCPUモジュール群、体内LAN・電源用HUBおよびバッテリを搭載し、完全自律で稼動できるようになっている。尚、体幹部に内蔵したバッテリにより連続30分の歩行運動が可能である。センサとしては、頭部に2基のCCDカメラ、腰部に3軸ジャイロと3軸加速度計が装備されている。さらに外部機器との通信用にBluetoothモジュールを胸部に内蔵している。

モータ、センサ等を容易に増設・交換するため、物理的に処理系を分離し、各関節のモータ制御およびセンシングタスク等のI/O(Input/Output)処理をサブCPU群で行い、運動制御および行動軌範型AI等、高い演算性能が要求される上位タスクはメインCPUモジュールで行うCPU構造を用いている。

加えて入出力系をサブCPUに分担させることで、ソフトウェアのモジュール化が達成でき、機構部・電気系統のみならず、ソフトウェアのメンテナンス性の向上も期待できるのである。尚、メインCPUにはSageを、サブCPUにcatena4を使用している。サブCPUには3chの自作モータドライバが搭載されており、体内LAN:I2CバスにHUBを介して結合されている。

サブCPUの追加は、体内LAN用HUBへ結合するだけで容易に行え、システムレベルでの拡張性を実現している。

また、分散制御系を利用することで、各関節アクチュエータの挙動を動的に変更可能とした。サブCPUモジュールに搭載されたモータドライバは、角度制御、電流制御、ブレーキおよび受動関節の4つの動作モードを備える。この動作モードおよび各モードの制御パラメータは、メインCPUより体内LANを介して1[msec]周期で動的に変更することが可能である。

このように、各関節の挙動を動的に変更することができるシステムを導入することで、例えばロボット転倒時には、腕部および脚部の各関節の制御ゲインを下げてコンプライアンス特性を持たせ、受身動作をとらせることができる。逆に起き上がり動作の際には、関節の制御ゲインを増大させ、モータ定格出力の数倍の大きなトルクを瞬時に出力することも可能となる。

非常に大きな関節可動範囲と機構的特徴、各関節の動的な挙動変更制御が融合することで、morphは、様々な全身運動が実現可能なシステムとなっているのである。